授乳中のダイエットサプリ|カロリミットや漢方はOK?看護師が解説

母親が赤ちゃんを抱く様子

産後の体型の変化に悩み、「授乳中にダイエットサプリを使っても良いのだろうか」と検索されたのですね。17年間、看護師として多くの母親に寄り添ってきた私だからこそ、そのお気持ちが痛いほどよく分かります。思うように体重が戻らず、授乳中だからこそ痩せないのではと焦る気持ちもあるかもしれません。

巷には、市販のサプリメントや漢方、人気のカロリミットやDHCプロティンダイエットシリーズなど、様々な情報が溢れています。しかし、母乳を通じて赤ちゃんへ影響しないのか、本当に安全なものなのか、そして避けるべきサプリメントは何なのか、専門的な視点での判断は難しいものです。

この記事では、曖昧な情報に惑わされることなく、あなたと赤ちゃんにとって最も安全で後悔のない選択ができるよう、看護師としての知識と経験に基づき、科学的な根拠を交えながら丁寧に解説していきます。

記事のポイント
  • 授乳中にダイエットサプリの使用がなぜ推奨されないのか、その医学的な理由
  • 市販の製品を選ぶ際に確認すべき具体的なチェックポイント
  • サプリメントに頼る前に見直すべき、より安全で効果的な体型管理の方法
  • 漢方薬に対する「自然だから安全」という思い込みの危険性
目次

ダイエットサプリの授乳中使用における注意点

母親が赤ちゃんを抱く様子
  • 母乳へ影響しないサプリメントはある?
  • 授乳中に特に避けるべきサプリメント
  • 人気のカロリミットは飲んでも平気?
  • DHCプロティンダイエットシリーズの注意点
  • 漢方なら安全という考えは本当か

母乳へ影響しないサプリメントはある?

授乳中に使用できる、母乳に全く影響しないダイエットサプリメントは、残念ながら「基本的にはない」と考えるのが最も安全なスタンスです。

なぜなら、サプリメントに含まれる成分の多くは、母乳に移行する可能性が否定できないからです。特に、脂肪燃焼を促進したり、糖や脂肪の吸収を抑制したりする成分は、成人の身体を対象に設計されており、発達途上にある赤ちゃんの身体にどのような影響を及ぼすか、十分な安全性のデータが確立されていません。大人の身体には無害な成分や摂取量であっても、肝臓や腎臓の機能が未熟な赤ちゃんにとっては、予期せぬ負担となるリスクがあります。

ただし、ダイエットを目的としたものではなく、授乳期の母体に不足しがちな栄養素を補うためのサプリメントは話が別です。例えば、厚生労働省も推奨している葉酸や、母乳の生成で必要量が増える鉄、カルシウム、ビタミンDといった栄養補助を目的としたサプリメントは、むしろ積極的に摂取が勧められる場合があります。これらは赤ちゃんの健やかな発育をサポートすると同時に、ママ自身の産後の回復を助けることにも繋がります。

したがって、「痩せる」ことを謳い文句にした製品は避け、授乳期の栄養補給を目的とした「妊産婦用」や「授乳期用」と明記された製品を選ぶことが、一つの判断基準となります。

授乳中に特に避けるべきサプリメント

授乳中にNGなサプリメントを避ける

授乳期間中は、赤ちゃんの健康を最優先に考え、特定の成分を含むサプリメントの摂取を避ける必要があります。特に注意すべきは、薬効の強いハーブや、体のメカニズムに強く働きかける成分です。

刺激性の下剤成分を含むもの

一部のダイエットサプリや健康茶には、便通を促す目的でセンナやアロエ、キャンドルブッシュ、そして漢方薬の成分である「大黄(ダイオウ)」などが含まれていることがあります。これらの成分は、腸を刺激して排便を促す「アントラキノン系」に分類され、母乳に移行して赤ちゃんが下痢を起こす原因となる可能性が指摘されています。赤ちゃんの未熟な消化管には大きな負担となりますので、成分表示を必ず確認し、これらの成分が含まれる製品は絶対に避けてください。

脂肪燃焼や食欲抑制を謳う成分

カフェインやカプサイシン、ガラナといった交感神経を刺激して代謝を上げることを目的とした成分も注意が必要です。これらが母乳を通じて赤ちゃんに移行すると、興奮状態になったり、寝つきが悪くなったりする可能性があります。また、食欲を抑制するような働きを持つ成分は、母体が必要とする栄養摂取を妨げ、母乳の質や量に影響を及ぼす恐れも考えられます。

私が看護師として勤務していた頃、原因不明の赤ちゃんの不機嫌に悩むお母さんが、自己判断で海外製のダイエットサプリを服用していたケースがありました。サプリを中止したところ、赤ちゃんの様子が落ち着いたという経験もあります。何が含まれているか分からない、特に海外製のサプリメントはリスクが高いため、絶対に手を出さないようにしましょう。

人気のカロリミットは飲んでも平気?

ファンケル カロリミットの商品画像
ファンケル公式サイトより引用

食事の糖や脂肪の吸収を抑える機能性表示食品として人気の「カロリミット」や「大人のカロリミット」ですが、授乳中の使用は推奨されていません。

ファンケルの公式サイトでも、製品のQ&Aページにおいて「妊娠・授乳中の方、お子様はお召し上がりにならないでください」と明確に記載されています。このようにメーカーが注意喚起を行っているのは、製品に含まれる成分の、妊娠中・授乳中における安全性についての十分なデータが揃っていないためです。

カロリミットシリーズには、桑の葉イミノシュガーやキトサン、茶花サポニンといった特徴的な成分が含まれています。これらの成分が糖や脂肪の吸収に働きかけるメカニズムは成人で確認されていますが、母乳を通じて微量でも赤ちゃんに移行した場合、どのような影響があるかは分かっていません。

安全性が確認されていない以上、たとえ微量であっても赤ちゃんへのリスクを考慮するのが医療専門家としての立場です。メーカーが使用を控えるように呼びかけている製品を、あえて自己判断で摂取することは絶対に避けるべきです。体重管理も大切ですが、授乳期は赤ちゃんの安全を何よりも優先する時期であるとご理解ください。

DHCプロティンダイエットシリーズの注意点

DHCプロティンダイエットの商品画像
DHC公式サイトより引用

「DHCプロティンダイエットシリーズ」は、1食をドリンクなどに置き換えることで摂取カロリーをコントロールする製品です。DHCの公式見解では、「出産後の体調が整った後でしたら、授乳中に摂っても差し支えありません」とされています。

この製品は、前述した脂肪燃焼などを謳うサプリメントとは異なり、医薬品的な成分で体に働きかけるものではなく、あくまで「栄養補助食品(置き換え食品)」という位置づけです。1食に必要なビタミンやミネラルなどが配合されており、栄養バランスにも配慮されています。

しかし、授乳中に利用する際にはいくつかの注意点があります。最も大切なのは、安易に食事を置き換えることで、母乳の生成に必要な総エネルギー量や栄養素が不足してしまうリスクです。授乳中は、通常時よりも1日あたり約350kcal多くカロリーを摂取することが推奨されています。無理な置き換えダイエットは、母乳の出が悪くなる原因になったり、ママ自身の体力の低下や貧血を招いたりする可能性があります。

もし利用するのであれば、3食のうち1食を完全に置き換えるのではなく、間食の代わりに取り入れたり、食事の量を少し減らした上で補助的に飲んだりするなど、工夫が必要です。あくまでバランスの取れた3度の食事が基本であることを忘れず、ご自身の体調をよく観察しながら慎重に試すようにしてください。

漢方なら安全という考えは本当か

様々な漢方と、哺乳瓶が置いてある様子

「漢方薬は自然由来の生薬からできているから、赤ちゃんにも安全だろう」と考える方がいらっしゃいますが、これは大きな誤解であり、非常に危険な考え方です。漢方薬も医薬品の一種であり、薬効成分が母乳に移行する可能性があります。

授乳中に注意が必要な代表的な生薬が、前述もした「大黄(ダイオウ)」です。これは瀉下(しゃげ)作用、つまり下剤としての働きが強く、便秘解消を目的とした多くの漢方薬に含まれています。例えば、ダイエット目的でよく使われる「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」や、「コッコアポEX錠」「コッコアポG錠」などにはダイオウが含まれており、これらは授乳中の服用を避けるべきです。母乳を介して赤ちゃんの体内に入ると、腹痛や下痢を引き起こす可能性があります。

一方で、ダイオウが含まれていない漢方薬も存在します。例えば、水分代謝を整える働きのある「防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)」をベースにした「コッコアポL錠」は、メーカーも授乳中の服用が可能としています。

このように、漢方薬と一括りにするのではなく、どの生薬が配合されているかによって、授乳中に服用できるかどうかが決まります。自己判断で選ぶことは絶対にせず、漢方薬を希望する場合は、必ず医師や薬剤師、登録販売者といった専門家に相談し、授乳中であることを伝えた上で、適切な処方や製品を提案してもらうことが不可欠です。

市販品と授乳中のダイエットサプリの付き合い方

母親がお店でサプリメントを見極めている様子
  • そもそも授乳中に痩せない理由とは
  • 市販でサプリを選ぶ際のチェックポイント
  • サプリより優先すべき食事と生活習慣
  • 体型戻しをサポートする栄養と運動
  • まとめ:ダイエットサプリの授乳中利用

そもそも授乳中に痩せない理由とは

「母乳をあげていれば自然と痩せる」と聞いていたのに、一向に体重が減らないと悩む方は少なくありません。授乳中は多くのカロリーを消費する一方で、痩せにくくなる生理的な理由がいくつか存在します。

ホルモンバランスの変化

産後の体は、妊娠・出産を支えていた女性ホルモンが急激に減少し、代わりに母乳分泌を促す「プロラクチン」というホルモンの分泌が活発になります。このプロラクチンには、体に脂肪を蓄えようとする働きがあると言われています。これは、いつでも母乳を作れるように、エネルギー源を確保しておくための体の自然な防衛反応なのです。

生活リズムの乱れと睡眠不足

赤ちゃんのお世話は昼夜を問いません。細切れの睡眠や慢性的な睡眠不足は、食欲を増進させるホルモン「グレリン」の分泌を増やし、食欲を抑制するホルモン「レプチン」の分泌を減らすことが科学的に分かっています。これにより、無意識のうちに食べ過ぎてしまう傾向が強くなります。

ストレスによる影響

慣れない育児によるストレスは、「コルチゾール」というストレスホルモンの分泌を促します。コルチゾールは血糖値を上昇させ、インスリンの過剰分泌を招き、結果として脂肪を溜め込みやすい状態を作り出してしまいます。

授乳による消費カロリーは1日あたり約500kcal以上にもなりますが、それを上回るカロリーを摂取してしまったり、ホルモンの影響で代謝が落ちていたりすることで、体重が減りにくくなるのです。サプリに頼る前に、まずはご自身の体が特別な状態にあることを理解することが大切です。

市販でサプリを選ぶ際のチェックポイント

サプリメントを見極める目のアップ写真

前述の通り、授乳中のダイエットサプリの使用は基本的に推奨されませんが、もし栄養補助を目的として市販のサプリメントを選ぶ場合には、以下のポイントを必ず確認してください。

「妊産婦・授乳婦向け」の記載があるか

最も安全なのは、開発段階から授乳中の女性を対象として作られた製品です。パッケージに「授乳期に」「ママのための」といった記載があるものを選びましょう。これらの製品は、この時期に必要な栄養素を適切に配合し、不要な成分や過剰摂取になりがちな成分を避けるように設計されています。

成分表示が明確で、シンプルなものか

どのような成分が、どれくらいの量含まれているのか、全て明確に記載されているかを確認します。聞いたことのないハーブや、多くの成分が混ぜ合わさった複合的なサプリメントは、どの成分が影響するか予測が困難なため避けるのが賢明です。葉酸、鉄、カルシウムなど、目的とする栄養素がシンプルに配合されているものを選びましょう。

安全性・品質管理の基準を満たしているか

例えば、GMP(Good Manufacturing Practice)認定工場で製造されているかどうかも、品質を見極める一つの指標になります。これは、原材料の受け入れから製造、出荷まで全ての過程において、製品が安全に作られ、一定の品質が保たれるようにするための製造工程管理基準です。信頼できるメーカーの製品を選ぶことも大切です。

これらのポイントを確認した上で、最終的にはかかりつけの医師や薬剤師に相談してから摂取を開始することをお勧めします。

サプリより優先すべき食事と生活習慣

多くの野菜を、家族で取り入れる様子

産後の体型戻しを成功させる鍵は、サプリメントではなく、日々の基本的な食事と生活習慣の見直しにあります。特に授乳中は、ママの栄養状態が母乳の質、ひいては赤ちゃんの健康に直結します。

栄養バランスの取れた食事

授乳婦は、母乳を作るために多くの栄養を必要とします。特定の食品を抜くような極端な食事制限はせず、主食・主菜・副菜のそろったバランスの良い食事を1日3回しっかりとることが基本です。特に、以下の栄養素を意識して摂取しましょう。

スクロールできます
栄養素豊富な食品の例授乳中の役割
タンパク質肉、魚、卵、大豆製品母乳の主成分であり、ママの体力回復と赤ちゃんの体を作る材料
カルシウム牛乳、乳製品、小魚、緑黄色野菜赤ちゃんの骨や歯の形成に不可欠。不足するとママの骨がもろくなる
鉄分レバー、赤身の肉、ほうれん草、ひじき産後の貧血を予防し、母乳を通じて赤ちゃんに鉄分を供給する
食物繊維野菜、きのこ、海藻類血糖値の急上昇を抑え、便秘を予防・改善する

和食を基本とした食生活は、これらの栄養素をバランス良く摂取しやすいためお勧めです。

十分な水分摂取

母乳の約90%は水分です。水分が不足すると母乳の出が悪くなるだけでなく、ママ自身の代謝も低下してしまいます。1日に2リットル程度を目安に、こまめに水分を摂るように心がけましょう。

焦らず、まずは日々の食事内容を見直すことから始めてみてください。それが、赤ちゃんにとっても、あなた自身の健康にとっても、最も確実な一歩となります。

体型戻しをサポートする栄養と運動

赤ちゃんの側で母親がストレッチする様子

バランスの良い食事を心がけることに加えて、産後の体の回復具合に合わせた適度な運動を取り入れることで、より効果的に体型を戻していくことができます。

産後の運動はいつから?

産後の運動は、焦って始めるのは禁物です。まずは産後1ヶ月検診で医師に相談し、体の回復が順調であることを確認してから開始しましょう。帝王切開で出産した場合は、傷の回復状態にもよるため、さらに慎重な判断が必要です。

無理なく始められる運動

最初は、体に負担の少ない軽い運動からスタートします。

  • 産褥体操: 出産で緩んだ骨盤底筋群を鍛え、子宮の回復を促す体操です。寝たままの姿勢でできるものも多く、産後すぐからでも始めやすいのが特徴です。
  • ストレッチ: 育児の合間にできるストレッチは、凝り固まった筋肉をほぐし、血行を促進する効果が期待できます。
  • ウォーキング: 赤ちゃんと一緒にベビーカーを押しながらのウォーキングは、良い気分転換にもなる有酸素運動です。まずは短い時間から始め、徐々に距離や時間を延ばしていきましょう。

激しい筋力トレーニングや長時間のランニングなどは、体に大きな負担をかけるだけでなく、母乳の味に影響を与える可能性も指摘されています。あくまで「気持ち良い」と感じる範囲で行うことが、長く続けるためのコツです。サプリメントに頼る前に、体を動かす習慣を少しずつ取り戻していくことが、健康的で持続可能なダイエットへの近道と言えます。

まとめ:ダイエットサプリの授乳中利用

最後に、この記事で解説した「授乳中のダイエットサプリ」に関する重要なポイントをまとめます。

  • 授乳中のダイエットサプリ使用は原則として推奨されない
  • 多くの成分は母乳へ移行する可能性があり安全性が未確立
  • 脂肪燃焼や糖質カットを謳うサプリは特に避けるべき
  • センナやダイオウなど下剤成分は赤ちゃんの下痢の原因になる
  • カロリミットはメーカーが授乳中の使用を控えるよう明記
  • 置き換えダイエットは栄養不足のリスクを伴う
  • DHCプロティンダイエットシリーズは補助的な利用に留める
  • 漢方薬も医薬品であり自己判断での服用は危険
  • 「漢方=安全」という考えは誤り
  • 産後に痩せないのはホルモンバランスや睡眠不足が原因
  • サプリを選ぶなら「授乳婦向け」の栄養補助食品を
  • サプリよりもバランスの取れた3度の食事が最優先
  • タンパク質、鉄、カルシウムを意識的に摂取する
  • 適度な運動は産後1ヶ月検診で医師の許可を得てから
  • あなたの健康と赤ちゃんの安全を第一に考えること
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この記事の監修者

さいとうのアバター さいとう 看護師, 美容アドバイザー

17年の臨床経験を持つ看護師と美容アドバイザーの知見を活かし、健康や美容、生活の質を豊かにする情報を中心に発信。医療現場で不確かな情報に惑わされる人を減らしたいという想いから、専門家の視点で信頼できる情報を提供します。
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